その透き通る手で

「しかし、暴力は感心しませんね。長谷君」

「悪霊ばらいですので許容してください」


 六川先生がたしなめるように言っても、真顔でサラリとかわしてみせる。
 さすが、長谷君。


『誰が悪霊だよ、誰が……』

「年中ふわふわしてて、付け入りやすい仲江を選んでひっついてるってだけで、十分悪霊だ。とっとと成仏しろ」

『んだとコラ!』

「ちょ、ちょっと! レンも長谷君もケンカしないで!」


 このふたり、多分、幽霊とか人間とか関係なく、相性が悪いに違いない。
 クラスメイトでいがみ合う場面が簡単に想像できて、なんだか二倍疲れてくる。

 ちなみに、長谷君しか見えてないはずの六川先生と眞井は、やたら楽しそうな顔でこの妙なやりとりを見守ってる。

 見てないで止めてよ、ふたりとも。

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