その透き通る手で

「仲江、なぜ急に見えるようになった?」

「え、そんなのわからないよ」

「他は――まあ見えていないようだし、どうやらこの悪霊だけみたいだな」


 他。
 そういって長谷君はあらぬところに視線をやり、わたしや眞井を戦々恐々とさせる。
 ……いるんだね。言葉を濁してたけど、そこにいるんだね。

 今度からは近寄らないようにしよう。
 固く心に誓いながら、わたしは考える。

 どうして、レンだけが見えるんだろう。

 レンがわたしにとって特別なんだってことは、何となく肌で感じてた。
 幽霊だって知る前、はじめて出会ったときから。

 でもその時すでにレンは幽霊で、時折わたしの前だけに現れたんだって言ってた。
 レンにとっても、わたしは特別なんだろうってそう思う。
……ううん、そう信じたい。
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