その透き通る手で

レンのこと。

人懐っこく話しかけてきたこと。

可愛いのに、たまに大人っぽい顔をすること。

いじわるを言って笑ったこと。

空が好きだっていったこと。


――あんなに楽しく話してたのに、何も言わずにいなくなったこと。



それから……



急に消えたレンのことを思うと、なんだか胸にしこりが出来たみたいな感じがすること。


それらをつっかえながらも語り終えたら、眞井はうーんとうなりながら感想を述べた。


「……それ、まさかの夢オチ?」

「ひどいっ!」


まさか、友達に『白昼夢を見たの?』なーんて言われるとは。
ショックで思わず叫んじゃったよ。


「冗談だってば。……でもあの踏切って、朝夕は通学か通勤のルートでしょ?」

「うん。特に8時台はラッシュだもんね」

「でしょ? なのにあの時間、あたしたちくらいの年代の子が、ボーっと突っ立ってるってありえる?」


ありえない。
わたしの遅刻と同じくらいありえないよ、それ。


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