先生の教科書
ホテルの駐車場に止めてあった彼氏の黒いセルシオに乗り込み、あたしは、早速化粧を始めた。

『学校まで送ってけばいいの?』

彼氏は、ルームミラーを見て、前髪を整えながら問う。

『うん。単位ヤバイから。進級できなきゃ、流石に親にキレられるよ。』

あたしは、ファンデーションを塗りながら、少し苦笑いをして彼氏の問いに答えた。

『了解☆んぢゃ学校いくわ。』

彼氏は、あたしの単位の話しに食いつく様子もなく、車を出した。

そういえば、この彼氏とは半年くらいの付き合いになるけど、あたしに興味を持つそぶりがない。

以前話した事だって、次に会った時には忘れてるタイプだ。

デートらしいデートもしたことが無い。
基本はいつも、今日みたいなラブホデートだ。


そもそも付き合って欲しいて言われた事もなかったかも…。



前彼と別れたその日にナンパされた。
気分が落ちてたあたしは、何もかも忘れたくてついて行った。
とにかく遊んで、歌って、酔い潰れて、気付いたらホテルのダブルベッドの上に寝転んでた。
当然、ナンパしてきた今彼は、あたしに覆いかぶさってきた。

あたしは、抵抗しなかった。

遊んでて楽しかったし、見た目も悪くないし、何よりも前彼が離れていって、ポッカリ開いた穴を何かで埋めたかった。


動機は不純だって言われるかもしれないけど、今は彼氏のこと大好きだし、付き合ってみないと好きになるかなんてわかんない。

みんながどんな恋愛してるか知らないけど、これがあたしの恋愛感。

彼氏だって淡泊なだけで、あたしの事好きだって信じてる。



そんな事を考えてるうちに車が停まった。
どうやら学校の校門前についたらしい。

化粧もバッチリ出来上がったし、彼氏に簡単にお礼を告げて、車を降りて校舎に向かって歩き出した。
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