先生の教科書

自分のクラスに向かって廊下を歩いていると、楽しげに会話をしながら、お弁当箱を持って歩いている子達によくすれ違う。

どうやら昼休み中らしい。
『そぅいえば、朝からまだ何も食べてないな…。』

そんなことを考えていると急にお腹が空いてきた。
その拍子に『グゥ〜…』と微かにお腹から音がした。

あたしは、しばらく立ち止まった後、教室へと向けて歩いていた足を食堂へと向けて歩き始めていた。



食堂に着くとみんな食べ終わった後だったみたいで、ほとんど人は居なくなっていた。


あたしは、この食堂のメニューで１番おいしいカツカレーの食券を買って窓際の席に座って、返事を後回しにしていた友達からのメールの返信を始めた。




『あ…。藤崎リナぢゃん。』


静寂を破って聞き覚えのない声があたしの名前を呼んだ。

反射的にその声が聞こえた方を向くと、声同様に見覚えのない顔の男がカツカレーを頬張りながらこっちを見ていた。


髪の毛は黒く、毛先が無造作に跳ねていて、肌の色は白く、目はくっきり二重で鼻が高い。
一般的にこういうタイプがカワイイ系と言われるのだろう。

気になるのは、この男が制服ぢゃなく、カッターにネクタイをしてスーツ用のパンツを履いていて、明らかにこの学校の生徒では無い事。


この男と接点が無い事を素早く記憶を廻らせ確認した後、首を軽く傾げながら言った。

『あんた誰…？』