先生の教科書
男は、一瞬真顔になって固まったかと思うと、いきなり手を叩いて大爆笑し始めた。


その男の意味不明な行動を不愉快な顔をして見ていると、その様子に気付いた男が笑いを堪えながら、涙目になった目を擦り言った。

『教師様にｽｹﾞｰ態度だな。俺、5月からお前のクラスの副担してんだ。』


『え…どういうこと…？
うちのクラスの副担、ハッシーぢゃ…』

男が発した言葉が理解出来ずに詳細を問い掛けた瞬間、大きな音があたしの声を遮った。

『キーンコーンカンコーン…』


予鈴だ…。

男は予鈴を聞いた瞬間、皿に残っていたカツカレーを急いで平らげ、水を一気に飲み干した後、立ち上がった。

『藤崎どうせ5時間目サボるんだろ？悪いけど俺の食器片しといて！！』

男はそう言うと、あたしの返事など聞かない間に食堂の出入り口の方角に向かって走りだした。

『えっ…！！？ちょっ…ちょっと！！』

男の唐突な行動に拍子抜けしていて、言葉を発するタイミングを逃してしまったが何とか呼び止めようと咄嗟に声を出した。

すると、男は足を止める事はなかったが、こっちを振り返り言った。

『あ〜…俺、黒木ユウだから！！クロて呼んで！！6時間目俺の授業だから出ろよ！！ぢゃあ後でな！！』

男はそう言い残し、食堂から走り去っていった。
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表紙・目次

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