先生の教科書
食堂に取り残された男の食べ終えた後の食器を眺めながら、とりあえず今起こった状況を自分なりに整理してみる。


彼は黒木ユウ。

あだなはクロ…。

5月からうちのクラスの2年B組の副担任をしているらしい…。


解らない…。


うちのクラスの副担任は、橋本ユリコていう、社会科教師で35歳くらいの年より老けてみえる疲れた独身女が担当しているはず。

あの男が本当に副担なら、ハッシーはどうなったんだ…?


4月後半から5月半ばまで学校をサボってて、今日久しぶりに登校してきたあたしには、自分のクラスがどうなっているかなんて全く解らない。



とにかく今解る事は、クロと名乗る男は、初対面でいきなりタメ口、呼び捨てをする不躾な男で、人の話しも聞かず、無理矢理頼み事を押し付ける図々しいやつだということ。


最もあたしの嫌いとするタイプだ。

奴が副担なんて冗談ぢゃない…。


ただでさえ面倒臭い学校にウザイ教師なんて最悪だ…。


『35番のカツカレー出来たよ!!』

嫌な妄想で途方に暮れていたあたしをカツカレーのいい匂いと食堂のおばちゃんの声が一気に現実へと引き戻してくれた。


あたしはさっきまでの嫌な気分を振り切るように
『は〜い!!!』
と元気よく返事をして、クロの食べ終えた食器を返却口へ片付けて、自分のカツカレーを受け取り、席に戻った。


『いただきま〜す★』

あたしは、勢いよくカツカレーを口に運んだ。


『やっぱ、チョーうめぇ★』

久しぶりに食べたカツカレーはお腹が空いていたこともあって、すごくおいしくて、あっという間に完食してしまった。


満腹になり気分が落ち着いたら、ふとクロの一言が気になった。


『どうせ5時間目もサボルんだろ?』

普通教師が生徒のサボりを容認するだろうか…。



『あいつマヂ教師なのかよ…。マヂ教師なら非常識だよ。』

相手がもう立ち去った後だって分かっているけど、突っ込みを入れずにはいられなかった。
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