先生の教科書
カツカレーを食べ終えた後、6時間目まで時間があったから時間潰しをするためにあたしは保健室に向かっていた。

『失礼しまーす。』

そう言いながら保健室のドアを開けた。

静かだ…。

中に入り、部屋の中を探索するものの誰も居ない。


『ラッキー★寝てやろー★』

あたしは勢いよく、ベッドに倒れ込んだ。



ベッドの上から部屋を見渡す。

この風景…。
この匂い…。
懐かしいな…。



つまらない授業にウザイ教師。面倒臭い友達関係が嫌で1年になったばかりの頃はよくここで授業をサボった。

次第に学校に来なくなって、保健室にも来る事無くなったけど。



ガラガラッ!!!


いきなり勢いよくドアが開いた音に驚き、反射的に体を起こし、ドアの方に視線をやる。


『チース★…って…あれ?先生いねーの?』

保健の先生の姿を探して部屋をキョロキョロ見渡すその男。

髪は茶髪の短髪で全体的に立てていて、肌は小麦色で背はおそらく185センチはある。
いかにも遊んでそうな風貌をしている。


男はあたしの存在に気付いて、声をかけてきた。

『自分体調悪いの?ごめんね。寝てるとこ邪魔しちゃって。』


『あ…。平気平気★サボって昼寝しようとしてただけだから。…あと、先生あたしが来た時からいないよ。』

あたしは、男の良心的な言葉に好印象をうけたから、先生がいないこともついでに教えてあげた。

男は少し困った顔をして言った。

『先生いねぇのかよ…。さっき足打って腫れて痛てぇから処置してもらおうと思ったのに…。』



男は椅子に腰掛け、ズボンの右足の裾を膝の辺りまで痛みで顔をしかめながら捲りあげた。

あたしは、腫れの様子を確認するため男の近くに歩み寄った。

『うわ…。痛そう…。』
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