腕挫十字固-うでひしぎじゅうじがため-
「そいつが自衛隊ってやつか」
「はい」

 鋭い眼差しで時弥を見据える男。少女の左にいた男だ。20代後半だろうと見受けられる。

「……」

 自衛隊員なんだけど……と時弥は心の中だけで突っ込んでおいた。

 少女は体を震わせて涙目で顔を伏せている。どこかのご令嬢なのだろうか、少し高そうなワンピースにコートを合わせた恰好だ。

「こいつと一緒に閉じこめておけ。今度は逃がすな」

「は、はいっ」

 えんじ色のスーツを着こなしているその20代後半の男が茶髪に言うと茶髪と他の2人も背筋を伸ばして応えた。

「……」

 パシリかなんかかな? 時弥は気づかれないように目をキョロキョロさせて辺りを探る。

 しかしすぐ両手を後ろで縛られて背中を乱暴に突かれ再びあの倉庫に促されるのだった。
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