腕挫十字固-うでひしぎじゅうじがため-
「うきゅ!」
「! いたぞっ!」

 変な声が聞こえて茶髪がそちらを見ると、山の切れ目につっぷしている時弥を見つける。

「まったく……逃げるんじゃねえよ」

「いや~なかなか逃げ切れないねぇ……あっはっはっ」

 薄笑いで小さく笑う。

 杜斗め覚えてろよ……と心の中で涙を流した。

「君、優しそうなのになぁ」
「え……?」

 腕を掴んで倉庫に促す茶髪に時弥はぼそりとつぶやく。

「知ってる? 自衛隊ってね1人も殺してないんだよ」

「なんだよ突然……」
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