腕挫十字固-うでひしぎじゅうじがため-
「そろそろ夜か」

 倉庫の入り口から見えるコンクリートの床に時弥はぼそりとつぶやいた。

 さすがに今日中には解決しなかったか……小さく溜息を漏らす。

「怖いよ……」

 少女がか細くつぶやいた。

 薄暗くなった倉庫に茶髪がランタンを置いていったが、その明かりはとても安心出来るようなものではない。

 時弥は震える少女を見つめてニコリと微笑み口を開いた。

「夜っていうのは怖くないよ」

「え?」
「だって……」

 安らかな眠りを誘うものだもの。静かにそう発して再び笑う。
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