腕挫十字固-うでひしぎじゅうじがため-
「……」

 暗がりの中、杜斗(もりと)は倉庫の近くにある灯りの点いた家を見つめる。

 男たちはあそこに集まっていると見たが……

「忍び込むのはもう少しあとだな」

 それまで仮眠といくか。と杜斗は草の生えた地面を確認して寝転がった。

 多少ごつごつして背中が痛いが我慢しよう。

 木々の隙間から見上げる空には星が瞬(またた)いていた。

 星座なんか知りもしない杜斗だが、昔の人はそこに神々の伝説や想いをはせたのだろうと目を細める。
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