腕挫十字固-うでひしぎじゅうじがため-
「とりあえず俺によっかかっていいから眠った方がいい」

「……でも」

 時弥は言い聞かせるように少女に発した。

 戸惑う理絵に付け加える。

「いざとなった時に動けないと困るでしょ? そのために体力を温存しないとね」

「うん……」

 理絵は納得して時弥に寄りかかり目を閉じた。

 寝付けないのだろう、いつまでももぞもぞと体勢を何度も直している。

「大丈夫。きっと助かるよ」
「……うん」

 聞こえないほどの声で少女は頷いた。
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