腕挫十字固-うでひしぎじゅうじがため-
 数時間後──杜斗がむくりと起き上がる。

「……10時か」

 腕時計のライトを付けて時間を確認してつぶやく。

 あと数時間は待ちたいが……さすがにもう眠れない。

 杜斗は小さく溜息を吐くと立ち上がって灯りの点いている家を確認する。

 警戒しながら山を出て家に向かった。

 考えたら俺よりあいつの方が小さいんじゃねぇか。

 顔をしかめてぼそりとひと言。

「戻すべきじゃなかったか?」

 今更、言っても仕方がない。

 大きな体を揺らして杜斗は足音を立てずに駆けた。

 武器が1つも無いというのは心細い。

 そこら辺に落ちている角材でも持っていようかとも考えたが動きが制限されるのも避けたい処だ。

 とりあえず今は忍び込んでいる最中なので余計な事は考えない事にした。
< 36 / 66 >

この作品をシェア

pagetop