腕挫十字固-うでひしぎじゅうじがため-
「こいつですよ。言ってた自衛隊のやつって」

「! 理絵ちゃん」

 茶髪が黒スーツの後ろから少女を連れて現れる。

「なるほど」

 黒のスーツに身を包んでいる老齢の男はそう言って口の端を吊り上げた。

「向こうから出てきてくれた訳か」

 下品な笑みを浮かべると、えんじスーツが懐(ふところ)からハンドガンを出して時弥に向ける。

「うへ……」

 さすがにこれはピンチ。

 と思った刹那──銃声が響き渡り、えんじスーツはハンドガンを持っていた腕を押さえていた。

「はら……? あ、杜斗」

「世話やかせんな」

 出てきた杜斗の手にはハンドガン。

 先ほど縛り上げた男たちから奪っていたものだ。
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