腕挫十字固-うでひしぎじゅうじがため-
「殺しっていうのはリスクが大きいわ。彼らにも共犯になってもらいましょ」

 そう言うとえんじスーツがトランクを開けた。

 中に入っていたアタッシュケースを取り出して地面に置き開く。

「! 覚醒剤……?」

 隠すようにして被せてあるスカーフの下から出てきたのは、ビニール袋に小分けにされている白い粉。

 それを1つ取り出しアタッシュケースを閉じたあとリムジンのダッシュボードから何かを出して戻ってきた。

「……俺、それだけはやった事ないんだけど」

「俺だってそうだ」

 2人は準備されているものにぼそりとつぶやく。

「大丈夫よ。打ってしまえば楽園に行けるわ」

「虚像の楽園だ」

 薄笑いで杜斗が言い放つ。

「君たち、こんな事してていいの?」

「!」

 時弥は3人の青年に目を向けて問いかけるように発した。
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