腕挫十字固-うでひしぎじゅうじがため-
「──っ」

 フラフラの黒スーツと青年たちは目を吊り上げて構えたが杜斗はそれを制するように発する。

「女の腕が使い物にならなくなってもいいのか?」

「なんだと?」

「このまま技を強めれば靭帯を痛めるか断裂する」

 技をかけている時弥をあごで示した。

 これは時弥と杜斗にとっては「賭け」だ。

 犯罪者に仲間意識などあるのかどうかは疑わしい処だが、共に行動してきた者たちには「連帯感」というものが生まれる。

 それを刺激する事で、この圧倒的な数の差を乗り切ろうというのだ。
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