腕挫十字固-うでひしぎじゅうじがため-

*あらあなたって……

「あー俺のバッグが無かった。どこにやったのかな」

「とりあえず民間人はむやみに動くな」

「え……?」

 青年の言葉に時弥(ときや)は思わず聞き返した。

「……」

 そしておもむろにサイフを取り出し中からカードを抜いて見せる。

「!? お前も?」

 つい張り上げた声に杜斗(もりと)は慌てて自分の口を塞ぐ。

 辺りを確認したあと声を殺して続けた。

「しかも俺と同じじゃないか」
「あ、そうなんだ」

 時弥は今年、自衛隊に入ったばかりの新人である。
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