初心者レンアイ(仮)
悲しい理由
そして、次の日…。
「紗枝、かわいいじゃな〜い!」
教室に入ったとたんに、千夏ちゃんが抱き付いてきた。
クラスメイトも私の変化に気づいたみたいで、目をこちらに向けてくる。
今日、私は髪の毛を下ろした姿で登校していた。
「お、ちゃんと下ろしとるやん。」
後ろから聞こえたのは、広川の声。
嬉しそうにニコニコしてる。
「広川が言ったから変えたわけじゃなくて、ただのイメチェンだからね。」
ばつが悪くなった私は、つい悪態をついてしまう。
「え、広川、紗枝になんか言ったの?」
しまった。
墓穴を掘ったことに気づく。
(え、二人ってそういう関係?)
クラスがざわめき始める。
「そう。なんで髪の毛下ろさんの?って聞いたわ。」
え?
昨日言ってたことと違うと思い、広川の方を見ると、パチッとウィンクをしてきた。
そのウィンクに、思わずドキッとしてしまう。
きっと広川は、私が注目されるのが嫌だろうと思い、気を使ってくれたのだ。
つまり、庇ってくれたんだ。
「なんだ。てっきり紗枝が広川のこと好きなのかと思っちゃった。」
ホームルームの後、残念そうに言った千夏ちゃんの言葉に、私は軽く否定した。
不思議と、悪い気はしなかった。