初心者レンアイ(仮)
野球のルールなんて、全く知らなかった。
お父さんが見るテレビの野球中継だって、煩わしく思ってた。
でも…私、勉強したの。
柊が好きと思うものを、私も好きになりたかったから。
好きな人と、好きなものを共有したかったから。
「哲士、頑張れ!!」
千夏ちゃんの声がグラウンドに木霊する。
マウンドにいる内海君は、その声に対して微笑んだように見えた。
グラウンドに届く位大きな声で私も応援出来たら、柊は微笑んでくれるのかな。
柊の表情は、キャッチャーマスクで見えない。
今、どんな表情してるんだろう。
真剣な顔?
いつもみたいなポーカーフェイス?
わかんない。
今だけちょっと、柊のポジションが恨めしく感じた。
「スリーアウト、チェンジ!」
パァンと心地いい音が響き、審判はそう告げた。