【S・S集】25時〜溢れた時間〜
「先生。俺、先生じゃなきゃダメなんだ……」


毛布に包まれた彼は、少し虚ろな目線で訴え掛ける。
先生は微笑みながら、彼に話しかける。


「少し寝ないと、疲れちゃうよ?」


彼は閉じそうな瞼に抵抗しながら、先生の手をしっかりと握る。


「寝たら、あいつのところに行くつもりだろ? 知ってるんだ! タケシも先生のこと好きだって!」


声を荒げる彼に、先生は困った顔をしながら答える。


「分かった。賢ちゃんが起きるまで一緒にいるよ?」


「ホントに?」


安心したのか、疲れが溜まっていたのか、彼は返事も聞かないうちに深い眠りについた。


彼が眠ったのを確認してから、溜め息をつく先生。
周りを見回して、遠慮がちに手招きをする。


「奈々子先生。ごめんなさい、タケシくん見てきてもらって良いですか?」


「あら、洋子先生また賢ちゃん?」


「ええ、つかまっちゃって」


「最近の子は、独占欲が強いのよね。もてる先生は大変ね?」


「五歳児にもててもねぇ……。それより今日の合コン大丈夫?」


少し離れた場所から、タケシの泣き声が聞こえる昼下がりのお昼寝タイム。
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