闇華
俺は焦った。
誰が俺の命を救ったって、メロナしかいないじゃないか。
自分を犠牲にしてまでどうして俺を?
「泣かせちゃってさぁ、メロナかわいそうじゃん。」
目の前の風景が歪んだ。
瞬時に身構える。声の主だろうか。…メロナを悪魔にした、悪魔だろうか?
「メロナは貰って行くよ。この姿になってしまった以上、ここの空気に長時間は耐えられないからね。それじゃあ、オニイチャン。ばいばい」
「ちょ、待ってくれ―…「待たないよ。メロナはもう、あんたの知っているメロナじゃない。」
「どういうことだよ?!メロナを返せ!」
空間が歪む。
メロナと謎の少女も歪む。
「どの口がそれを言う。そっちのメロナは―…死んだんだよ。」
黒い光が周りを包んで、メロナは謎の少女と消えた。
その場に立ち尽くす俺。
遠くから俺を探す声が聞こえる。きっと村の人たちだろう。
俺は動けなかった。
何かに縛られているかのように足が言うことを聞かない。
「メロナ、」
かろうじて動く口で愛しいメロナを呼ぶ。
メロナ、メロナ―…
メロナは最後に顔を上げて俺にゆった。
「だいすき」
と。
ぐらり、視界が揺れて草原に倒れ込む。
そして己の罪に涙を流した。
俺はメロナに酷いことをした、と。
「…さまー!!」
近くで俺を呼ぶ声がする。
誰かが俺を見つけた足音が聞こえて、俺は濡れた瞼を閉じた。
キラキラと光る星だけが2人の兄弟の終末を見届ける。