闇華



体から力が抜けて、お兄ちゃんと離れ離れになった草原にパタリと倒れ込んだ。


少しの間、静寂な場所で息を潜める。
聞こえるのは無風に近い風の音と、遠くから聞こえる喧騒。


ここは、わたしが育った村なのかな。
それとも、これは‘恐怖’を無くすための儀式なんだから偽物なのかな?



まだ離れてから少ししか経っていないのにこんなにも懐かしいと感じるのは何でだろう。



「ふぅ」



とりあえず立ち上がって深呼吸。


「え」



こっちの世界の空気がおいしくない。前までは何とも思わなかったのに、何でだろう?やっぱり、闇に身を捧げたからなのかな。



ぶわっと風がわたしの横を通り過ぎた。
草がざわざわと揺れる。

足を一歩一歩前に進ませる。
その一歩一歩がどんどん足を重たくさせた。



いきたくない、訳ではないけれど…いきづらい。





危険区域、禁区、を出て村に足を進めた。
今は何時かな?もうみんな寝ている時間かな?




そう思ったとき、ゴーンゴーンと二回ベルが鳴った。
これは時間を表すベル。


2回しか鳴ってないから2時かな。しかも、夜中の。





辺りは真っ暗。


遠くから聞こえてきた喧騒が何なのか、村に近づいて理由がわかった。






これは、



大勢の人の叫び声だ。



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