闇華
あの小さな村で一体なにが起こっているの?
ゆっくりだった足取りはいつの間にか早くなっていて、それと同じくわたしの呼吸も荒くなっていた。
「助けてくれぇえぇぇェエ!」
村の簡単に作られた門がわたしの視界に入るとそこの門から人が一人、現れた。
その人はわたしを見つけて「ああ!」と声をあげる。
「誰、誰でもいいから、この村を助けてくれえ…」
わたしの近くまできてわたしの肩を揺さぶる。あまりの力の強さに少しよろめきながらも「あ、あなたは」とあたしは声をもらした。
この人はわたしがこの村にいたころ、この村で一番力が強かった男だったらだ。
しかし、今のこの男は「助けてくれえ助けてくれえ」とわたしに懇願するばかり。あのときの面影は全くと言っていいほど、感じない。
「この村はお終いだぁ、」
わたしはいい加減揺さぶられる行為に限界を感じたから、やんわりと男の手を解いた。
「助けてくれえ助けてくれぇ」
何に対して恐怖を抱いているのかはよくわからないけれど、村で一番強かった男が「助けてくれ」と言うからには何か、強いものがいるのかもしれない。
「…」
奥に進んでみよう。なにが起こってるのか、知りたい。
わたしは好奇心と、村の安否を見るべく足を踏み出した。
これが、‘恐怖’を導くことになるとは知らずに。
「ぁはははは!消えちゃえ!全部消えちゃえ!」
「やめてくれええ」
「死にたくないいい」
「イヤァ゛ア゛ァ」
ばたり、ばたり、ばたり
「みんな、無くなっちゃえよ。こんな、村なんてさぁ!」