闇華
村の奥へ進むと一気にしん、とした空間がわたしの周りをつつんだ。
少し前までは、ううん…あわたしがここにくるほんの少し前までは人の叫び声が絶えなかったのに。
まるで、私を待っていたかのようで怖い…。
「…………」
「…………」
「誰も、いないの…?」
いるはず、でしょ?だってさっきまであんなに…人の悲痛な叫び、恐怖に叫ばずに入られなかった奇声があんなにも沢山あったのに。
「…………」
さわ、さわ。
月の光に照らされた草木が一瞬吹いた風に揺れる。
わたしの周りには無風と無音が続く。
聞こえるのはわたしの呼吸と、
誰かのかすかな寝息。
「…」
誰かが近くで寝てる?誰が…。
寝息の聞こえる方に足を進める。風はまだ、吹かない。
村の真ん中にある大きな時計台が建つ公園を抜けて、小さな花壇の裏にある道に向かう。
今思えば、なんでこんな遠くから誰かの寝息が聞こえたの?って話なんだけど―…、
ミシッ
あ、下に落ちていた小枝を踏んじゃった。