闇華
「――――…、」
誰かの寝息が止まった。
起きたってこと?
なるべく息を潜める。息をしちゃいけないって思ったから。
気付かれてしまうから。
でも、一体なにに?
‘人’
‘化け物’
‘幽霊’
‘悪魔’
―…他にもたくさんいる。だけどどれが当てはまるかはわかんない。
カサカサ、と枝についている葉っぱが揺れる。風が、吹き始めた。
月の光が湖とその周辺にある草木を照らす。
わたしは湖の形を縁取るように目を動かす。
寝息はこの湖から聞こえたのに、湖のどこにもそれらしい‘何か’は居なかった。
安堵と一緒に疑問に駆られる。一体ここにいた‘何か’はどこにいってしまったのか、と。
一体、どこに。
湖を覗く。
まだ、風は吹いている。