闇華
「ん?あれは、」
ヴィスが顎に手を添える。目を細めて足に力を入れた。
なにか、いるのかねぇ。いきなりこられるのは心臓に悪いからやめてほしいね。殆どの確率で死なないからって、ねぇ。
「やはり、ですか。」
やはり、ですかって、あたしにも説明ってもんをしてほしいなぁ。
「説明プリーズ。あたし、早く帰りたいんだけど。」
メロンのことも一応心配だし、なにより家が壊れてないかが心配だしねぇ。あいつとあいつが喧嘩なんかしてたら家、跡形もなく消えてるだろうし。
お金がかかってたりするんだから、さ。
「説明なんてものいりませんよ。すぐにでも分かりますから。ほら、」
ザワザワザワ、
べたり、べたり、
『く、レェぇ…助けテくれェェ…ヒカリガこえぇ、よぉ。』
グチャリ、グチャリ、
ザワザワザワザワザワザワ
「異臭がたまらないねぇ。血なまぐさい臭いがさぁ。」
「ハグレモノですかね。ボスが言っていたのは、あれのことでしょうか?」
「アレ、が?あんな気持ち悪いのが?冗談じゃないよ。つれて帰ってこいだっけ?あれ?殺してもいいんだっけ?どっちにしろ、あたしは触りたくなーい。」
だってアメーバみたいだもん。色は赤黒いし。目に至っては真っ黒で空洞化してる感じだし。あたしたち側にもなれず、こっちの世界側にもなれなかった奴なんかに触りたくない。
あたしは変わった趣味でねぇ。汚れたものとは交わらないって決めてるからなぁ。ああ、もう。鳥肌が立ってきた。
『ぁあァ…ヒかリがコワイ…闇モこわい…………ぅう、』
奇怪な音を立てながらハグレモノはあたしたちに近づいてくる。いや、あたしたちの中にある力の方かなぁ。強いものに惹かれていく習性があるからねぇ、こういうハグレモノは。