闇華
「私が。」
ヴィスがあたしの一歩前に出る。今思ったけど、さっきからヴィスがあたしを守っているように見えるなぁ。
「えー、さっきからヴィスばっかり働いてるじゃーん。たまにはあたしにも働かせてよねぇ。」
そう言いながらヴィスの真っ黒なマントを引っ張ると、少しよろめくヴィス。銀色の髪は月に照らされ白く光る。一瞬、髪が真っ白に染まったのかと思っちゃったー。
「いえ、私が。あなた様のような方に手をお貸しいただくなんて、できません。」
かたっくるしいなぁ。なんでこいつは、こんな話し方なんだろう?敬語とか目上の奴に使う言葉じゃん。あたしはみんなと対等なんだし、
「あたしに敬語使ったら、殺すよん」
「なにをいうんですか?そんなのだめに決まっています。なにより、この世界を牛耳るほどの力を持っていて、それとボスの―…」
「殺す、って言ったの聞こえなかったのかなぁ?敬語はだめだってばぁ。」
ビクリ、ヴィスが揺れた。そして、あたしと瞳を合わせたくないらしく目をそらす。
「………あなたって人は、脅しですか?」
「脅し?違うよ。あんたを気に入ったから――――――だ!」
最後の言葉のところで自分の腹に力を入れた、と同時にあたしの手から放たれた鋭いナイフは`ハグレモノ´に向かう。いや、もう向かった。
「ぅ゛ぁああ!やめ、てぇエ!頭に、頭に!頭…がぁああ!?」
頭?ああ、あんたのそれ、頭だったの?今更だけど、原形とどめてなかったよ。