闇華
南の城?つまりはあれかぁ?光と生活をともにしていると?
「南の城。つまりは、紅(ベニ)の国か、朱(シュ)の国に身を潜めているということか?」
ヴィスが問う。南にある国は気候が比較的暖かい地域だ。ここは闇にもっとも近い、緑の国。ここから南は結構距離がある。敵も良いところを選んだもんだねぇ。だけどあそこはあたしたち闇の者にとってはリスクが大きすぎる。
光がもっとも強いところだからだ。朝日も強ければ月の光も煌々としている。
そしてもっとも特徴的なのは、人の光。人の持つ光が強さがすごい。よく言えば正義感が強く、悪く言えば、後先を考えない。そんな奴らと一緒に生きていけるのか?
何かが、おかしい。
「―…そうか。報告ご苦労。それを一旦ボスに伝えろ。意外と大きな問題かもしれない。」
いつの間にか話が終わっていたのか、黒ずくめの男が姿を消そうとする。今から闇の世界に向かうのかぁ。あ、そうだ。ついでに、
「あのさ、メロンって奴のことも見てきてくれないかなぁ?」
「……メロン?ですか?食べ物?」
いや、ちがうよー。
「あたしの妹的なー。儀式終わったと思うし、どんな変化が起きてるか楽しみだからさぁ。」
黒ずくめは「はい。」と返事をすると、姿を歪ませて、消えた。
「アルミス様、どういたしますか?」
「だから、敬語。今の間にあたしが忘れるとでも思ったー?」
「すみません。―…コホン、いまから、どうする?」
「そうだねぇ、早速紅の国にお邪魔しようかぁ。だけど今の格好だと、ばれるし光にやられるねぇ。」
今のあたしたちの格好はいたって重装備でない。矢なんてすぐに肌を貫通する。顔も隠せていない。
「………そこを逆に堂々としないか?」
「いやいや、それはだめだよー。あそこの人らは正義感が強いからねぇ。それと同じくプライドも高い。どこの馬かも知らない奴らに自分たちの民族衣装を身に付けて欲しくないよねぇ、たぶん。」
「なら、黒い重装備に?」
「重装備なんて逆に動きづらいよー。あたしたちは光より強いんだからさぁ、ヴィスも自信もちなよぉ。ってことで、黒いマントでも着るかぁ、」
「黒いマント?今用意させる。おい、」
「―…ハッ、何か。」
おお、まだいたんだ。さっきのとは別の奴。
「黒いマントを用意しろ。2人分な。」
「あーあ、楽しくなりそう。」
「楽しく?」
うん、そうだよぉ。といいながらあたしはクスッと笑う。