心の隙間風
ぎいっと軋んだ音をさせて下駄箱の扉を開く。
私は革靴を取り出して上履きをしまった。歪んで上手く閉まらない扉を精一杯力をいれて押す。
「長野は歩き?」
そう私にとっては当たり前のことを寺内君は聞く。
頷くと、寺内君はにいっと笑った。
「じゃあ、車で送るよ。迎えが来るんだ」
「え、えっ!?それは、申し訳ないし…。今日用事あるんでしょ?ここから家はすぐだし…だから、気にしないで」
いいからいから、と寺内君は私の腕を引いて歩く。
男の子の手って大きいんだ、なんてぼうっと考えた。
校門前には黒い高級車が止まっていてその車かな、と思うが違うらしい。
「まだ来てないみたいだから、もう少し待って」
「だから、いいって…」
すると停車中の車からガタいのいい二人組の男が出てくる。
「長野里穂だな」
私の確認も得ずぐいと、私の腕を掴み引っ張る。
「い…っ!な、何なんですか!?離して…っ」
「暴れ…」
多分その男は暴れるな、と言いたかったのだろう。だが、最後まで言えず車に体を強打しているのは寺内君が男の頬を思いっ切り殴ったからだ。
「お前…何しやがる…っ!」
寺内君はそう言って殴り込んできたもう一人の男の腹を蹴飛ばし、腕を掴み柔道で言う背負い投げをした。
車に体を強打した男は口の横から血を流してもう一度私の腕を掴む。
「命令だからな…!悪く思うなよ」
そう言って私を殴ろうとする手を寺内君が掴み腹を蹴飛ばす。
「…何かヤバくない?」
近くを通りかかった女子生徒がこの様子を見て先生を呼びに行った。