心の隙間風
心の扉


「え、じゃあ長野のご両親は別居されてるの?」

高級車の中で寺内君が聞く。

「うん、そう。離婚した方がいいと思うんだけど」

軽く思わない方が、と小さく咎める寺内君にごめん、と頭を下げる。

「そんなに私と暮らしたいのかな…。私がいない方が女とか連れ込めるような気がするけど…。絶対裏があるに決まってる」

「娘と一緒にいたいだけなんじゃ…」

そんなに軽いものではないと分かっている。だが、そのくらい軽いものであってほしいと願う。

「でも、多分…大丈夫だと思う。もう父親は、来ないと思うから」

「大丈夫かどうかなんて…」

カーナビのその先右方向です、という音声が車内に響く。

住所を告げたのはその為だったのか、と合点が行った。

「今日は本当にありがとう」

自宅が近付き寺内君に礼を言う。寺内君のおかげで助かった。

凄く格好よく見えた。

体格が大きい相手を殴った時、大丈夫か、と私を気遣ってくれた時。

寺内君が何時もとは別人にさえ見えた。

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