心の隙間風


「座れー」

朝のHRはセーフ?なんて聞きながらぎりぎりで入ってきた生徒たちでうるさい。

それに慣れてる先生は適当にあしらって出席状況を確認する。

「お前らいい報告だ。今日から一緒に勉強する子が一人増えるぞー」

ざわついた反応を楽しむかのように担任は薄く笑っている。

「お前ら察しがいーな!そうだ、転校生だ。じゃあ、入って」

そう言われ入ってきたのは長い髪を緩く巻いた如何にもお嬢様、という雰囲気の少女だった。華奢な体にこの学校の制服がよく似合っている。

「嘘、だろ…」

そう後ろから呟きが聞こえて、この声が寺内君のものだと気付く。

「高木禮花です。イギリスで五年間過ごしてまた日本に戻ってきました。それから私は…」

一呼吸置く。誰もがこの美少女に釘付けになっていた。

私もその一人で、足細いなとか腕も細いなとか思いながらぼうっと見つめていると高木さんと視線がかち合った。

「私は、寺内由行の許嫁です」

その発言にクラスがどよめき誰もが寺内君を見やる。

「…親同士の取り決めだし、何より俺は覚えてない。だから大勢の前でそんな出鱈目を言うな」

「で、出鱈目ではないです!私は…」

「はいはいはい。痴話喧嘩はHRが終わった後にしてくれ。席はそこの空いてる席…長野の前だ。色々と面倒みてやってくれ、長野」

面倒事に巻き込まれそうで私は怖じ気づいた。

胸が痛いことを私は気付かないようにした。

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