心の隙間風
「面白い名字だね」
「へ!?」
次の日。教室の席に座った途端後ろに居る寺内君に声を掛けられた。
まさか声をかけられるとは思っていなかったので素っ頓狂な声を出してしまった。
「あ、ごめん。面白いは失礼だね。珍しい読み方だね」
にこやかに笑う彼は爽やかで笑顔が眩しい。少し長い前髪が目に入らないのだろうかと気になる。
「…そうかな。でも確かに、一度も同じ名字の人に会ったことはないなあ。寺内君は?」
「俺も一回もない!どんな気分なんだろ、同じ名字の人を見ると」
どうなんだろうね、と笑いながら返して鞄を机の横にかける。
びっくりした。
まさか誰かが私にこんなに早く話し掛けてくれるとは思わなかった。高校生活の駆け出しは上々みたいだ。