心の隙間風
「ただいまー」
夕飯を殆ど作り上げた時、母親が帰ってくる。ナイスタイミング、と思いながらお帰り、と返事をする。
「特に何もなかった?」
「うん。手紙はテーブルの上ね」
父親からの電話について話そうかと思ったが、気まずくて食事の時にご飯で気を紛らわせながら話をしようと思った。
ご飯をよそってその上にカレーをかける。その間に母親は手紙にざっと目を通していた。
テーブルの上にカレーの器を置く音に気付いたのか、母親が飲み物を出す。
準備が整い、いただきますと言って食べ始める。一口食べたらと決心して、ゆっくりとスプーンでカレーを掬い口に入れる。
何時も心に止めておく噛む回数20回を越え、私はカレーを飲み込んだ。
「あのね、お母さん」
「何?」
そう週間天気予報を見ていた母親が此方を向く。
「今日、お父さんから電話があったよ。一緒に住まないかって…、明後日、迎えに来るって…」
「里穂はお父さんと暮らしたい?」
「まさか。私はお母さんと暮らしたい」
「そう…。じゃあ、その電話は無視しなさい。お父さんにも私から電話しておくわ」
分かったと頷いてカレーを再び口に入れる。
テレビによれば水曜日の天気は晴れだった。