First love~awaikoi~
私は、その人と肩を並べて、歩き出した。

私は寝つけなかった。

でも、本気で眠りたいとも、思っていなかった。

あの人と話した言葉の一つ一つを思い出し、

かみしめて、心に焼きつけたかったから・・・・・・。

何度も何度も、ベットで寝返りをした。

「本当にね・・・・・・。」

と、小さくつぶやいてみる。「どうしてもう少し

早く産まれなかったんだろ」

でも、私は、十分に幸せだった。

あの人の幸せが、そのまま私の幸せだった。

「じゃ、おやすみ」

別れる時、あの人はそう言った。

そして、明かりのついた玄関に―――。

私は、道の暗いところに引っ込んで、じっと見ていた。

玄関のドアが開くと、シルエットで、女の人の

姿が見えた。お帰りなさい、

とその人は言って・・・・・・。

シルエットでも、その女の人のおなかが大きい

ことが、よく分かった。

「もう来月に生まれるんだよ」

と、歩きながら、あの人はうれしそうに言って

たっけ。「できるだけ早く帰ってやらないとね」

その、幸せなシルエットを見たとき、

少しも嫉妬していなかった、

と言えばうそになる。

あそこに立って、

「お帰りなさい」

と言ってるのが、私だったら。

でも―――いいんだ。

そんな事考えてたって仕方ない。

あの人とあんなに歩き、

話せた事。

それで十分・・・・・・。



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