First love~awaikoi~
喧嘩のときは、いつもそんな目になる。
「いや、とはなんだ」
「そんな女のためにお金なんか出さない」
―――いやな静けさがした。
「俺のかせいで来た金だぞ。どこに使おうと、
俺の勝手だ!」
お父さんは、いつもこんな風に怒鳴る。
たぶん、あの声は外まで聞こえてる。
でも、そんな事、二人の頭には全然浮かばない。
ドタドタと足音がして、私は、あわてて、
自分の部屋に戻ろうとした。でも、
お父さんは二階に来ないで、玄関から、
出て行った。バタン、と近所に響き渡る
音で、ドアが閉まった・・・・・・。
私は、おりていって、お母さんを
なぐさめる気にもなれない。
―――でも、なんて言えるかな?
お母さん、悪い男と一緒になったと
あきらめて、って?それとも、男なんて
そんなもの、って言うのかな・・・・・・。
私は、部屋に戻ると、ベットにもぐり込んで、
毛布を頭からかぶった。―――お母さんの
泣く声が、聞こえてこないように。
やめて。―――今夜だけでも、せっかく
すばらしい思い出のできた日だから。
でも、どんなに強く毛布をかぶっても、
お母さんのすすり泣く声は、私の耳まで
届いてきて、いつまでも眠らせて
くれなかった・・・・・・。