First love~awaikoi~
私は、急に胸苦しさを感じた。言えない、
と思った。言いたくない。「さようなら」
とは言いたくない。
それは初めて経験する気持ちだった。
言葉が、まるで鎖ででもつながれてるみたいで、
出て来ない・・・・・・。
玄関のドアが開いて、お母さんが出て来た。
傘を広げて、小走りでやって来ると、
「まぁ、ぬれて。―――送っていただいたの?」
私はうなずいた。
「うん」
「すみません、どうも」
「あー、いや、どういたしまして」
私は、はぁっと息をついた。
「ありがとうございました」
と、小さな声で礼を言う。
「いや、どうってことないよ。でも、
風邪をひかないようにね」
「はい」
「本当に」
と、お母さんが言った。
「降りそうなのに、傘を持っていかないんだから。
駅から電話でもすれば良かったのに」
私は、青ざめた。―――お母さん!
どうしてそんな事言うの!
「―――本当にありがとうございました」
「いいえ、とんでもない」
その人は、ほほえんで、道を戻っていった。
私は、急に体の力が抜けて、ぼんやりと
その場に突っ立っていた。
あの人は、私がうそをついたと思っている。
うそつきだ、と。
そうじゃない・・・・・・。私は―――
私は―――。
「何してるの」
と、お母さんがせかせるように言った。
「中へ