First love~awaikoi~

私は、急に胸苦しさを感じた。言えない、

と思った。言いたくない。「さようなら」

とは言いたくない。

それは初めて経験する気持ちだった。

言葉が、まるで鎖ででもつながれてるみたいで、

出て来ない・・・・・・。

玄関のドアが開いて、お母さんが出て来た。

傘を広げて、小走りでやって来ると、

「まぁ、ぬれて。―――送っていただいたの?」

私はうなずいた。

「うん」

「すみません、どうも」

「あー、いや、どういたしまして」

私は、はぁっと息をついた。

「ありがとうございました」

と、小さな声で礼を言う。

「いや、どうってことないよ。でも、

風邪をひかないようにね」

「はい」

「本当に」

と、お母さんが言った。

「降りそうなのに、傘を持っていかないんだから。

駅から電話でもすれば良かったのに」

私は、青ざめた。―――お母さん!

どうしてそんな事言うの!

「―――本当にありがとうございました」

「いいえ、とんでもない」

その人は、ほほえんで、道を戻っていった。

私は、急に体の力が抜けて、ぼんやりと

その場に突っ立っていた。

あの人は、私がうそをついたと思っている。

うそつきだ、と。

そうじゃない・・・・・・。私は―――

私は―――。

「何してるの」

と、お母さんがせかせるように言った。

「中へ






< 8 / 21 >

この作品をシェア

pagetop