桜色を覚えた絵

大きな手は簡単に結衣の指をからめとり、バレンタインの花が刻まれたペアリングを太陽に照らして輝かせる度に彼が満足そうに微笑んだ。

多分、無意識だった。
なんとなく周りの浮ついた非現実的な空気にのまれて、手なんか繋いでしまっていた。

日だまりよりも直接伝わる温かさに、彼女はときめくばかりで困ってしまう。


普段は空き地となっているところには色とりどりレジャーシートが敷かれ、

豪華なお重を広げる家族や持ち寄りでパーティーメニューを頬張る大学生グループ、

会社の集いらしき宴会状態の大人たちや勢いで来て売店の割高なサンドイッチを半分こする中学生カップルで賑わっている。

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