風神I
「手、離してくんない?」
さっきから一言も喋らなかった紫頭があたしの腕をつかんでいた。
あたしが力を入れて振りほどこうとしたけどびくともしない。
それどころか紫頭はどんどん強くつかんでくる。さすがに、手が痛くなってきた。
「痛いんだけど。」
あたしは顏をしかめた。
「わりぃ…」
そう言うと紫頭は手を離した。
「ま、真城!!大丈夫か!?おい、紫音!!女の子に何やってんだよ!!」
ツンツン野郎はあたしと紫音と呼ばれた男の間に入り込んだ。
あたしの名前が呼びすてだったことには何も言わないでおこう。
お前とかで呼ばれるよりましだ。
ツンツン野郎はあたしの捕まれた腕を心配そうに見た。