BLUE HEARTS
┣second lesson
時刻は23時14分何秒。溜まっていた洗い物を済ませた頃、姉が髪を乾かしながらソファに座った。
背中まである自慢の髪。よく、結んではさらりとほどける様子を見せていたっけ。
氷らせたグラスと缶ビールを取り、「お疲れさん」と言葉を添えてテーブルに置く。
「ありがと。圭介も飲もうよ」
「また今度。つまみは枝豆でいいだろ」
「付き合い悪いなあ。塩一杯振ってね」
姉は四月から隣町の病院で看護士をやっている。愚痴こそ言わないけど、大変さは見れば分かる。
「………。」
仕方ない。
たまには姉孝行しないとね。姉弟二人三脚、随分苦労かけてるしさ。
一本だけだぞ。
缶ビールを持って隣に座ると、姉は嬉しそうに肘で小突いた。
「乾杯しよ」
「乾杯って。何に」
「そうだなあ、姉弟の絆に。いや愛にかな」
「勘弁しろよ。ほら乾杯」
カンッと乾いた音に続けて、俺はビールを小さく一口飲んだ。
その時だった。突然、俺の携帯が震えた。メールだ。
差出人は門脇優花。
…─────!
「あ、女の子でしょ」
「え、な、なんで…?」
「分かるよお。圭介ってさ、女の子とメールしたり電話したりする時、普段と違うじゃん。携帯の持ち方とか言葉遣いとか。無意識なんだろうけどさ」
それを言われて俺は慌てて視線を下ろす。
驚いた。いつもは片手で操作してる筈なのに、両手で握ってるじゃないか。
「あきらちゃんからメールきたって言ってた時も確か…───」
「───…両手で持ってた?」
「ううん、正座してた」