BLUE HEARTS
鬼塚家までの道のりに、何故だか緑色に照らす外灯が一本ある。
鬼塚あきらは昔から、その外灯にめっぽう弱い。
彼女曰く、少年兵のおばけが出るんだそうな。
恥ずかしい奴。そう言った8歳の俺は、この時初めて後ろ回し蹴りを食らう事になる。
そして今、問題の外灯が十数メートル先に見えていた。不気味な緑色。
横目にいる鬼塚あきらは、どことなく怯えて見えた。
少年兵が見えるのだろうか。
「誰かいる」
「…え?」
「外灯のとこ。誰かいんだろうがよ」
冗談だろ。
ごくり。
大袈裟に鳴る喉。
すると鬼塚あきらが首根っこを掴んできた。怖がり方まで乱暴か。
「う、嘘だろ。そそそ、そんなん見え、見えねえよ」
「………。」
目つぶってるよ。
なるほど、俺が誘導しろって。
息吹で呼吸を整え、俺は一歩足を進める。左足。右足。左足。右足。
ついに外灯の横まできた時、それは声を掛けてきた。
「へえ。春海君、あきらちゃんと一緒だったんだね」
一瞬で血が冷め、全身が硬直する。
錆ついた首を恐る恐る外灯へと向けると、そこには門脇優花がいた。
外灯の下、薄気味悪く影を作りこちらを覗く門脇優花。
「か、門脇…?どうしてこんな時間に」
「ゆ、優花…?」
「ちょっとね。それじゃあ、また学校でね」
それだけ言うと、門脇優花は歩いていった。
ちょっとね…───?
根拠なんてない。だけど、胸に靄(もや)が掛かる。
灰色の靄(もや)が。
「もしかして、お前が会ってたのって…」
「あ、ああ」
「…そうか」
靄(もや)が、掛かる。