BLUE HEARTS
┣first lesson
鏡に写る俺は、いっちょまえにファイティングポーズを取り、右の拳をまっすぐ突き出す。
この動作を一日五百回。かれこれ六年続けている。いつかの為に。
継続は力なりって言うじゃない。だとしたら、このもう1つの日課もいつか報われるのだろうか。
「秋本 沙恵。ピンク」
望遠鏡、メモ帳、ペン。三種の神器を要するサバイバル。
のぞき。聞こえが悪い。ロマンと言わせてもらおうか。
俺はロマンに生きている。
「おい春海」
「西井 絵里。水玉」
「聞こえてんのか春海」
「へっ」
素っ頓狂な声が跳ねた。
慌てて神器を隠し、首を向ける。
「…───っ!お、鬼塚あきら」
しまった。
そこにいたのは墨白高校の雌猿を束ねる女将、鬼塚あきら。兵隊を従え、仁王立ちしている。
「は、はは。ほ、本日はお日柄も良く…───」
「──…何してんだ。春海」
怖い。小柄でリスみたいなのに。そもそも第二校舎の屋上に何故いるんだ。
「ほう、のぞきか」
「え…」
校舎の一室を見つけると、小さな足で歩み寄ってくる。覗き込む視線と交わる。
胸ぐらを掴まれ、噛んでいたガムが眉間にぶつかる。
次の瞬間、鬼塚あきらの蹴りが俺のあごを貫いた。
意識が朦朧とする中、不謹慎にもこんな事が脳裏によぎった。
「……ぅぁ…」
「さすがっす、あきらさん」
「おう」
ナイス、白。