BLUE HEARTS
日曜の朝。カーテンの隙間から光が射し、ほこり達はパレードの時間。
ベランダでは雀(すずめ)の談笑会。
「三丁目の雀田(すずめだ)さん家の娘さん、まだカラスにつきまとわれてるんだって」
「やだ。羽にガラスの破片でもつけてるのかしら」
「それが雀山(すずめやま)さんの話だと、銀紙をくわえてたんだって」
「あら、ませてるのねえ」
なんてね。
「…ふぁ…ぁ」
寝たのか。寝てないのか。どうにもおかしな感覚だ。
ただ脳はずっと働いていたと思う。
あの時、門脇優花はあそこで何をしていたんだ。
あの時、胸をおおった靄(もや)は何だったのか。
ぐるぐる、ぐるぐると。まるで船でただ働きをする奴隷のように。
部屋をでると、姉が「おはよ」と声を掛けた。ソファに体育座りをして、手には大さじ二杯の甘いコーヒー。
「おはよ」
牛乳をコップに注ぎ、俺も隣に座る。
テレビはバラエティーを映している。
「どうしたの圭介、眠そうな顔して」
「まあ、寝起きだからね」
「ふうん、そっか」
牛乳を一口。
携帯を開いてみると、メールが一通届いていた。
気づかなかった。なんだ、ちゃんと寝てたのか。
「………。」
門脇優花からだ。
内容は至って普通のもの。昨日はありがとうとか、次の誘いを臭わせる内容だった。
どうした俺。返事しろ。
「圭介、また女の子でしょ」
「…ううん、そんなんじゃないよ」
あとで。あとでしよう。