君のためにできること
君は、まずゴミと血なまぐさかったこの僕の部屋を掃除し、綺麗にした。僕の部屋じゃないように感じ、はじめは居心地が悪かった。
そして君はこんな僕のために食事も用意してくれた。しかしあの時の僕には何を食べても砂の味しかせず全て吐き出してしまっていた。

僕も君もどうすればよいか分からず。ただただ僕は、君を責める一方だった。

「お願いだ…クスリを…もう大丈夫だから…クスリがあれば元気になれるんだ…」

僕は涙目に君にそう訴えた。しかし君は決してクスリのありかを告げなかった。

「ダメ…岳クン…クスリに負けないで…」
君は熱の籠った瞳で僕を見つめてそう答える。しかし愚かな僕は、君を罵倒し、怒鳴りつけたんだ。

「もうほっといてくれ!いいからクスリを出すんだ!何処に隠した!言え!」

そんな君は、ぼくがそう尋ねていてもただただ首を横に振るばかりだった。
僕は、痛いくらいに君の肩を掴んで、揺さぶった。そう巻くし立てた挙句、君に手を上げてしまったね。

虫の音が静かに響き渡る夏の夜。君の頬を叩く音がやけに大きく響いたように感じた。君はそんな僕を涙目になりながらもただひたすらにじっと見つめてくる。

「どうして…どうしてわかってくれないんだ…もう、僕には何も残っていないんだ。こんな僕は愛される資格なんてないんだ!」

僕はそういうと再び君の肩を掴んだ。

「だから!…だから!クスリを!」

そんな君は、その熱を持った瞳で再び僕をみつめて言う。

「…クスリは…捨てたわ…だからもう諦めて…」

僕は、その瞬間絶望と怒りを再び感じ、君に襲い掛かかった。

「な…、なんてことを!」

其の時の僕は、まるで癇癪をおこした子どものようだ。泣き叫び、君に当たり散らし、殴り、蹴り。加速された僕の狂気は留まることを知らずにただひたすら暴走しはじめた。

「痛い…お願…やめて…」

君のそんな哀願の言葉に聞く耳すらもたずに…
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