君のためにできること

新宿歌舞伎町―――

まさか、ここにくるとは思いもしなかった。どこか偏見を持っていて、自分でも馬鹿にしていた僕がホストになろうとしていた。愚かな自分は女に貢がせて、金を得ることが最も早いと考えた。

そんな考えをもってこの歌舞伎町で働こうとする若者はどのくらいいるのだろう。テレビでも名の知られていた有名店を訪れ面接を受けることにした。有名店のほうが稼げると判
断したんだ。

その有名店が【club Adam】。

さながら、キャスト自身がアダムで客がイヴとでも表現したかったのだろうか、ホストクラブの店名には打ってつけではあると思った。


面接の時、顔の傷の事を聞かれたが、適当に受け流し、二つ返事で採用された。いわゆる体入ってやつさ。
ホストは、客さえつかめば伸し上がれる世界。僕は感情を捨てることで金を得ようとした。

清らかな君には全く想像もつかない世界だろうね。

しかし僕にはこの欲望が渦巻く街がお似合いの場所だったようだ。こんな僕でさえすぐに客がついたんだ。