君のためにできること
「んぁ…ッーー」
歌舞伎町のホテル街の一室。
僕は、客を抱いていた。金と地位を持つ女性。40代ってだけは教えてくれた。俗に言うマクラってやつだな。
僕の上で喘ぎながら腰を廻す女。さすが40代とは言ったものだ。
僕に初めてついたこの客がゆうこさん。彼女は、有名雑誌の編集長を務めている女性。バリバリのキャリアウーマンで独身貴族だ。成熟した大人の色気。セックスは熟したほうがより磨きがかかり互いに心地よい快楽が得られると言うのもまんざら嘘ではないのだと思った。ただ、僕の下半身は、心に浸食されているのかまったく絶頂に達しない。
「ごめんね…ゆうこさんが悪いわけじゃないんだ…」
「…いいのよ…こう言う時ってあるもんね…大丈夫…」
本当にそうだった。先に言ったように、クラブにいるような女とは比べものにならないくらいセックスが上手く、ここまで達しているなら、趣味でセックスをしていたとしても、咎められないくらいだと思った。こんな状態の僕でさえ下半身は反応したんだ。
ほんとうに問題は僕の心だけだった。
自分に対する激しい嫌悪感と君に対する罪悪感で僕の心は支配されていた。
「光成…今だけは、私の傍にいて…それだけでいい…」
「ほんとうに…ごめんね…でも精一杯ゆうこさんを癒すよ…」
結局、彼女を絶頂に迎えさせることも出来なかった僕は、優しく抱きしめて彼女の髪を撫でた。