君のためにできること
奥の部屋は防音されていてかとても静かだった。
僕が大金を持ってきたからなのかソファア席に通され、しばらく待たされたのち、黒服の男が部屋に入ってきた。
黒服が向かいのソファアに腰を下ろしたとき、僕は驚いた。

そこには、テレビでも見たことがある顔。あの僕が働いている【club Adam】の代表。光条だったからだ。

―光条 星夜(コウジョウ セイヤ)――

彼は僕が働く店舗【Club Adam】、それから他系列店、3店舗を取り締まる代表。まさか店で会う前に光条とこんなかたちで出会うとは思わなかった。
そして同時にこの有名店も光条の手で闇に染められていることを知った。

光条はおもむろに内ポケットからタバコを取り出すと、バイヤーがすかさずライターに火をつけて光条の前に翳した。その様子でバイヤーとの上下関係もはっきり見えた。
光条は鋭い眼光で僕を見つめる。

今となっては店には余り顔をださないみたいだ。僕の顔をみても何も反応がないのは、それが理由だ。
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