君のためにできること
秋の夕刻、まだ残暑が残るこの暑さ、身も心もひんやりと冷々としていた僕には、多少なり辛かった。
クラブを後にして直ぐに僕は、改めてゆうこさんにかけ直した。もちろん、残りの５万をゆうこさんに援助してもらおうと思ったからだ。案の定、連絡したら直ぐに出してもらえた。

僕は、ゆうこさんを抱いたあと、直ぐにクラブに戻った。ここは相変わらず五月蠅い。
既にクラブでは楽しめなくなっていた。クスリの所為だろうか、異常に耳が反応する。心臓まで響く重低音が気持ち悪い。はやくこの場を去りたかった。
僕は一直線に店員に扮するバイヤーのところに向かった。

「約束の金だ…」

バイヤーは一言も交わさずに不敵な笑みを浮かべ、封筒に入ったそれを受け取ると、目線で合図して僕と一緒に奥の部屋に向かった。

奥の一室には既に光条がソファに腰を下ろして待っていた。

「…金を作ってきたんだな。」

「はい…」

僕は懐から先ほどゆうこさんからもらった５万が入った封筒をだしてテーブルに置いた。
光条は、封筒の中身を確認してから、懐にしまう。

光条はタバコを取りだして、口に含んだ。するとまたすかさずバイヤーが火をつけて光条の前に翳した。
光条はため息に似た勢いで煙をひと吹きした後言う。
< 111 / 135 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop