君のためにできること
「…他のやつはほとんど知らない。幹部のやつらも含めてな。唯一、俺と一緒に店立ち上げた、隼人くらいだ。」

隼人とは【Club Adam】を取り仕切る内勤だ。

「まぁ…実を言うと俺は…クスリの売買を始めてから成功したんだ…」

話によると、ホストとして稼いできた資金を使い、自ら店舗を構えたまではよかったのだが、キャストが悪いのか店舗が上手く廻らなかったようで、とても困惑していた。そんなとき、客からクスリの話を持ちかけられたらしい。はじめは、自分も餌食にされる立場ではあったが逆に利用してやったと豪語していた。
僕はあの鋭い目付きに吸い込まれそうになりながらもかろうじて頷いた。

「悪い…こんな話興味ないよな?…じゃあ率直に聞く」

僕は光条の言葉をまった。

「お前…クスリ欲しさにこの仕事始めたのか?」

何もかも全て見透かされていそうな瞳に負け、僕は正直に答えた。

「だったら辞めとけ…ホストはそんな甘い世界じゃない。」

「でも直ぐに大金を稼ぐにはそれしかないって思ったんですよ…だいたい貴方があんな高額を要求しなければこんなことやらずに済んだんです。」

僕は、薬が切れてか、少し苛立った言い方をしてしまった。

「それとこれは別の話さ。…ただお前に提案があってな。」

「…提案…?」
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