君のためにできること
「最近、やつらの取り締まりが厳しくなってな。店でのやり取りは密かに隼人と行ってきた。でもこれは危ない橋を渡ることと同じなんだ。」
僕はさらに嫌な汗を手の平にかいて静かに聞いていた。
「…それに、客にみつかると厄介なんだ…こういう噂は直ぐに広まる。クスリが見つかって、ガサ入れに入られて潰れた店、何店舗もみてきたからな。噂がたっただけでも客足がどんどん減っていく…うまくやらなきゃドラッグなんて身を滅ぼすだけだ…」
そういうと、光条は、僕をあの目で睨めつけながら言う。
「…率直に言う…お前が隼人の変わりに運び屋になれ。報酬はクスリだ。」
僕は、断わろうと思った。
「言っておくが断らないほうがいいぞ」
僕は、動揺を隠すことが出来なかった。
「…どういうことですか?」
「わからないか?クスリの値段決めてるのは俺だぜ。そのことが何を意味するかわかるだろ?」
「そ…そんな…」
「お前は、俺の飼い犬になるんだ。それか廃人になるんだな。」
僕は、僕の中で声にならない叫びごえを挙げた。
「おい…」
光条はバイヤーの方に目線を変えてバイヤーを呼んだ。
「ちょ…何するんですか!?」
そばで静かに聞いていたバイヤーが僕に近寄り、徐に僕の腕の袖をめくりあげた。
「こりゃ…ひでぇ…予想以上だ。…もうお前…クスリなしじゃ生きてけないよ。」
僕の腕にある無数の注射針の痕をみて光条は口角を上げてそう答えた。僕は、目を見開いて絶望した…
こうして、僕は、光条の犬として、【club Adam】で文字通り飼われるようになり、代わりにクスリを得ることとなった。